年をとると若いとき何でもなかった階段の昇り降りや腰をかがめたりする動作などが負担になってきます。かつてのあの若かりし頃を思い浮かべて「年老いた」という気持ちが頭をもたげてくるのはこのような体のきしみを感じる時でしょう。50代60代そして70代へと進むにつれてそういった思いをさらに強く感じるのは私一人ではないでしょう。日常の起居振舞いにおいて腰痛、ひざの痛み、五十肩を含めた諸種の関節痛を訴える人たちが年々増加の一途を辿っている事実は、見逃すことのできない重大関心事であります。
どうしてこのような症状が発現するのか、これに加え日常生活における種々の生活様式がどのように左右するのか、その源となる骨格についてまず説明しておきましょう。
私たちの体は約200個の大小、種々な形をした骨によって組み立てられております。
これらの骨の連結には不動性結合と可動性結合の二種類があり、後者が関節と呼ばれています。これは両骨間に隙間があり、自由に骨を動かせる仕組みになっています。関節は骨と骨の連結ですが、硬い骨同士が直接接触することにより摩滅し、運動障害をおこして痛みを訴える原因となります。こういったことを防止するため、それぞれの骨の表面(関節面)に関節軟骨が存在し、骨を保護したり、クッションのような役割を果たしています。
軟骨は関節の働きを滑らかにする組織です。その軟骨を構成する成分の中心的なものは、基質である軟骨細胞で、これに加えて水分、コラーゲン、プロテオグリカンによって構成され、これらがバランス良く働いておれば健全な軟骨としての機能が保たれますが、バランスがくずれるとなんらかの異常、障害が起こります。これらの軟骨の組成について大約を説明しておきましょう。
これは年齢とともに発現、老化を意味する一過程です。若い人でも激しい運動をするスポーツマン、肥満などで下半身に重い圧力を負荷する人、ストレスの多い人などは変形性関節症の発症の確率は増加します。
中でも目だつのは中高年の腰痛とともにひざの関節痛であり、五十肩などでありますが、そのほとんどは変形性関節症とされています。これらは突然発症するのではなく、長い年月を経て悪化する加齢現象で、軟骨成分の合成能と分解能のバランスの崩れ、肥満、過度のストレス、性差などが大きな要因と考えられています。
欧米での調査報告では、65歳以上の人では63〜85%に症状が見られており、日本でも厚生省(現厚生労働省)の調査においても変形性関節症および類似疾患の患者数は50万人以上といわれております。性別では女性の罹患率が高く、さらに年齢別では男女とも50歳以上から発症、増加し70歳台後半が頂点に達しているようです。
関節には骨相互の摩擦を防ぎ、衝撃を吸収させるための軟骨が果たす役割は非常に大きいのですが、これがなんらかの原因によって異常が生じると軟骨が摩擦し、最終的には消失します。今日日本では、これらの疾患に対する治療法は、対症療法的に行われていますが、経口的に症状を軽減させたり、予防を目的とする薬剤が見られませんでした。
アメリカでは、最近俄然脚光を浴び多くの治療例が報告されているものにグルコサミンという膝、肩、腰、ひじ、脊柱などの変形性関節症に対して非常に有効で、ドイツでは早くから医薬品として承認されてきた物質とプロテオグリカンの構成成分であるコンドロイチンを配合した栄養補助食品があります。
各種化学物質の安全性試験および有効性研究などの傍ら、四天王寺国際仏教大学教授および校医を兼職。またPL法施行に伴い、生活科学研究所が通産省原因究明機関ネットワークとして登録され多方面にわたり活躍。
日本トキシコロジー学会認定トキシコロジスト。 医学博士(日本消化器病学界終身認定医)
主な著書・論文に 「暮らしのなかの科学(物のできるまで)」(ダイヤモンド社)、「超・睡眠革命」(ジュピター出版)、「ドクター・ヤナさんの肝心カナメの健康法」(ジュピター出版)、「科学技術の進歩と人間生活−高度情報社会における健康維持の対応について−」(講演)ほか多数。